心、理、初
初くんの辛い過去
○二階の理也の部屋(夜)
理也「初が中一の時に、仲が良い男友達が居て、初はそいつに恋して…告白した。そして…フラれた」
心「その男が…初くんを……傷つけたの?」
理也「そいつは傷つけるつもりはなかったみたいだけどな……」
心「どういう…事?」
理也「そいつが他の友達に話したんだよ。初に告白されて、フッた事を。そしたら、その友達は初に確認しに来たんだ。本当なのかって。初は本当だと答えた……。
その後からだ。初の周りの人が一斉に初を避けるようになったのは……」
心「何で? 何で初くんを避けるのよ!」
理也「世の中、お前みたいなやつばっかりじゃないんだよ!!」
理也が大きな声を出す。
理也「受け入れないやつも……多いんだ……」
心「そんな事…分かってるよ……。
私もお父さんとパパと一緒に暮らしてる時に、色々言われたから……」

○(回想)十九年前の心が通っていた小学校の教室(放課後)
心「遊ぼう」
友達A「無理」
心「何で?」
友達A「だってママに心ちゃんの家はおかしいから、そんな子と遊ぶなって」
心「おかしい?」
友達A「お父さんとパパと住んでるのはおかしいんだって」
(回想終了)

○二階の理也の部屋(夜)
理也「ごめん……」
理也が申し訳なさそうな顔をする。
心「大丈夫だよ、私は。色々言われたけど、全然気にしてなかったし。だから、謝らなくても」
理也「俺を守ろうとしてくれたのに……ごめ」
心「初くんを傷つけるきっかけを作って…ごめん。辺寺を守れなくて…ごめん」
理也「そんな事…」
心「初くんを守ってくれて…ありがとう。
話してくれて…ありがとう」
心が笑顔で言う。
心(ありがとう。辺寺…)
理也が心の顔をじっと見る。
心「…そんなに私の顔を見てどうしたの? 何か顔についてる?」
心が両手で自分の顔に触る。
理也「ついてない」
理也はそう言いながら、両手で心の両手を掴む。
理也「キレイだと思って見てただけだ」
心(何…言ってんの……)
心「元々キレイなんですけど。
手離して」

○カフェ心貴呂の店内(夜)
常連の女性客の橋本「ねぇ、ねぇ! ねぇ!!」
心は顔を上げて、キッチンから橋本を見る。
心「私…ですか?」
常連の女性客の橋本「そう。あなたを呼んだの!」
心「…何でしょうか?」
常連の女性客の橋本「あなたが何で理也に恋人が居るなんて言ったのか、私、考えたんだけど……」
橋本はそう言った後、無言で私を見つめる。
心「話は終わりでしょうか?」
常連の女性客の橋本「理也が好きなの?
だから、邪魔な私を諦めさせるために、理也に恋人が居るなんて、言ったの?」
心「申し訳…」
常連の女性客の橋本「そうなんだ! まあ、あなたが私に勝てるはずないものね。あなた全然色気ないし、男には一切モテなさそうだもの」
他の女性客達の笑い声が聞こえてくる。
心(気にするな……)
心「申し訳」
常連の女性客の橋本「諦めたら? 理也があなたなんか好きになるわけないんだから」
心(落ち着け……)
心は両手それぞれを強く握る。
初「お客様が諦めて下さい」
初が橋本の後ろに立って言う。
心「初くん」
常連の女性客の橋本「私に…言ってるの?」
橋本が振り返って初に言う。
初「はい。
辺寺には恋人が居ますので」
心「初くん!!」
理也「初…どうした…」
理也が慌てて初に駆け寄る。
常連の女性客の橋本「恋人って……理也の恋人って…どこに居るのよ!!!」
初「ここに居ます」
心「初くん!!!」
心(ダメ!!!)
理也「初……止めろ……」
初「あなたが先程会話していた女性が辺寺の彼女です」
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