飼い主の溺愛

自分じゃはちみつの香りが気にならなくて、

それよりも椎名さんの香りに意識が持っていかれる。

さわやかな香水の香り。

椎名さんの部屋にいくつか置かれているうちの1つかな?

なんて思いながら、もっと近づきたいな…と椎名さんの方を振り返る。

椎名さんはクロくんとの会話で気づかない。

下から椎名さんの顔を覗き見ると、

やっぱりカッコいい。

私はしゃがんだまま少し体を伸ばして、

椎名さんの首筋あたりに顔を埋める。

その瞬間、椎名さんの動きが固まる。

…嫌だった?

と下から椎名さんを見上げると、

椎名さんは驚いた顔で私を見てて。

それがなんだか珍しいし、面白くて。

私は思い切り椎名さんに抱きついて、顔を埋める。

椎名さんの香り、体温…

心地いい…

「ちょ、美夜!」

「…ん?…ダメですか?…いや?」

咎めるような椎名さんの声に不安になってそう聞く。

「そうじゃなくてっ、みんな見てるけど…美夜大丈夫?」

みんな…?

見てる…?

っ!!!



< 113 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop