ことほぎのきみへ
「…かず君、もー無理」

「まだ1分も経ってねーよ」

「わかんないの!」

「暗記しろ」



……
…………頑張って、一樹


駄々っ子のようにごねる亜季を
ぴしゃんとたしなめる一樹に
心の中でエールを送ってると、不意にゆうりが思い出したように口を開いた


「そういえば、テスト明けたらもう文化祭か」

「はやいね」

「うちのクラスなにやるんだろう」

「俺達のクラスは準備めんどいからって
休憩所にするみたいな話でてる」

「えー!!メイド喫茶やりたいー!!
よく漫画とかである男女逆転のやつ!」


私とゆうりが同じクラスで
一樹と亜季が同じクラス


一樹のその発言に
教科書とにらめっこしてた亜季が
ばっと顔をあげて、不満顔で騒ぎだす


「俺に言うな。
てか、ごつい男がスカート履いてる姿なんて誰得なんだよ」

「おもしろいじゃん」

「なんもおもしろくねーよ」




……去年は亜季とゆうりと同じクラスで
お化け屋敷だったな


言い合う二人を眺めながら
去年の文化祭を思い返す


高校に入って初めての文化祭は
……なかなかに刺激的だった


お化け屋敷をやると決まって

やるからには本物に劣らないものにしよう!と
文化祭マジックでやる気満々になった人達の中に

俗に言う『ガチ勢』の人がいて


照明、音響から衣装、特殊メイク、仕掛け……

どこからその技術や道具を手にいれたのかは
今でも謎なんだけど…

とにかく

すべてにおいて
ごだわりにこだわった出来のお化け屋敷が完成して

入場した生徒や一般のお客さんから
それはもうたんまりと悲鳴と絶叫、涙を頂いた
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