ことほぎのきみへ
「私はちゃんと気持ちを伝えられる?
その相手と戦える?
……そんな風に色々考えちゃって
焦るし、怖いし、不安になって…」


「…」


お茶とお菓子をのせたトレーを
テーブルの上に置いてから
私はゆうりの隣に腰をおろす


言葉通り不安そうに
瞳を揺らしてるゆうりに
なんて声をかけたらいいのか悩む


『大丈夫だよ』


……『大丈夫』って言葉は
万能だってよく言うけど

人によっては反感を買う言葉でもある

それに何の根拠もなく口にするのも嫌だ


『ならもう告白しちゃおう』

『もっとぐいぐいいけばいい』


……そういう
ゆうりのペースを乱すような
言葉を言うのも嫌だし……

亜季とかは気にせず言っちゃいそうだけど
タイミングなんて人それぞれ違うんだし…


「…」


ゆうりは何も言わないけど


……答えて欲しいんだろうな


目がそう言ってる



……



「………そうなってみて考えるのはだめ?」


悩んだ末にそう答えた

意味がうまく伝わらなかったみたいで
ゆうりは「?」マークを浮かべてる


「悟先輩が告白されたらとか
悟先輩に好きな人ができたらとか
『今』そうなってるわけじゃないでしょ?」


「結局、そうなってみないと
自分がどう思うか
どう動くかとか分からないと思うの」


「……それは…………そうかも…」
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