私のかみさま
「お、起こしてしまいました…?」

「…大丈夫です」


小さく首を振るあの子に、本を持ったまま近付く


「ごめんなさい、勝手に」


ゆっくり起き上がったあの子の視線は
私の手元に向けられてる


「いえ」

「具合は?」

「平気です。少しぼんやりしてるだけで
…佐奈さんこそ、大丈夫ですか?」


初めて呼ばれた自分の名前と
その問いかけに、ぴくりと反応する


「辛そうに見えたから…」

「…ちょっと…頭痛くなって
でも、今はもう収まったので…」


その言葉は本当で
この子に声をかけられた瞬間
さっきまでの痛みは嘘のように消えた


「そうですか」


その返答に、ほんの少し安心するように
あの子の表情が動いて


……病人に心配されちゃった


立つ瀬がないと思いながら
ちらりとあの子を見る



……普通だ


いつものおどおど感がない
自信なさげにうつ向いてもない

ただ、本人の言う通り、ぼんやりとはしてる

寝起きのせいなのか
薬のせいなのか定かじゃないけど
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