私のかみさま

………このひとは、よく分からないひとだ


殺そうとしている人間に
なんでこんなことをするんだろう


ちらりと自分の指先に目線を落とす


すっかり腫れの引いた指先


……これも


放っておけばいいのに、わざわざ手当てして



…
……分からない。このひとが



｢…ありがとう、ございます｣

｢つけてやる｣

｢え、いや大丈…｣

｢遠慮するな｣



私の手から、半ば強引にイヤリングを奪うと

彼は私の髪に触れる

隠されていた耳が外気に晒されて
少しすーすーする



｢…｣



抵抗しても無駄だと悟って、大人しく待つ



……待つ間


ふわりと鼻先をかすめた香りに意識を奪われた



……このひと、不思議な香りがする



この距離だと、はっきり分かる


風が吹くにつれ、ほのかに香る
何かの花のようないい匂い



……どうしてか、とても落ち着く



…………懐かしいと



そう思うのは、なんでだろう