どうせ神さまだけが知ってる




「今年もイズミが最優秀賞?!?!!」



ミナミが叫んだ声でわっと周りから声が上がる。私は必死で、「目立つからやめてって!」とミナミを押さえつける。


美大際当日、けれどすでに、夕方。


あれから数日、死ぬ気で作品を仕上げて、提出したのは今朝のこと。そのまま作品展に飾られて、審査員たちが午前のうちに評価をつけ終わったらしい。


結果、今年も私が最優秀賞を貰うことになった。



「いやーさすがダネ、ほんとうちらの誇りだよイズミー」

「まさか今年もとるとは思わなかった、やっぱ天才だよおまえは」



色とりどりに飾られた構内はなんだか居心地が悪くて、比較的人の少ない中庭にやってきた。先ほど担当の教授からメールで伝えられた最優秀賞の話をすると、ミナミは興奮しきって、シンジョウは感心したように笑ってくれた。



「でも、ハヅキはダメだったんだ? あいつもいいとこまで行くとおもってたケド」

「ああ、あいつは───」



シンジョウの言葉の先はこうだ。

美大際の作品展への提出期限は当日の午前9時、つまり今日の朝なのだけれど、なんとあの浅井葉月という男、あろうことか提出期限をすっぽかしたのだった。



「え、それで、参加できなかったってこと?!」

「やべーよな、ホント、アイツらしいと言えばそうだけど」

「勝負するって言ってたんだけどね、結局不戦勝になっちゃった」

「ハヅキとイズミの戦いとか誰も混ざれねえなー」



そこら辺で出店していたので買った餡ドーナツを頬張る。

本当に、やってくれたよ、ハヅキの奴。


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