どうせ神さまだけが知ってる


「ちょっとツカちゃん、火うつるって!」

「ミナミさんビビりすぎっス!」


ぎゃあぎゃあと騒ぎながら落ち葉の山に火をつけている相変わらずのふたりを見て、やれやれと思いながらも頬が緩む。

秋になって寮の庭や玄関付近に落ち葉がたまってきたものだから、全寮生に週末の庭掃除実施というお達しがやってきたのは先週の話。イベント好きのミナミがそこに目をつけないはずもなく、かき集めた落ち葉を使って焼き芋パーティーをすることになった。

今日は金髪ロングのウィッグをつけてポニーテールに結んでいるミナミの瞳はブルーのカラコン。普通の人なら躊躇ってしまうような格好も、色白で目が多きいから何でも似合ってしまう。


「お、イズミ、まーたそんな隅にいんのか」


みんなが落ち葉をかき集めて火をつけている中、木陰でこっそりひとりでいる私を見つけたのはシンジョウだ。


「別に隠れてるわけじゃないよ、ほら」


見せたのはアルミホイルと段ボールに入ったサツマイモ。ミナミたちが火をつけて騒いでいる間に、ひとつひとつアルミホイルで包んでおこうと思ったの。


「バカだなー、こういうのは一人でやるもんじゃねえだろ」

「でもみんな火起こししてるし、私は一人の方が気楽だし」

「そういう問題じゃねえの」


よれよれの白シャツに短パン、汚れたサンダル。いつも通り後ろに無造作に束ねた髪はキンパツから地毛が見えている。相変わらず見た目もだらしないなあと思いながらシンジョウを見つめると、なんだよ、と恥ずかしそうにそっぽを向いた。


「そんなこと言うならシンジョウも手伝ってよね」

「初めからそのつもりだっつの」


木陰に座った私の横へやってきて、アルミホイルを奪い取る。

見た目も女の子に対してもだらしないくせに、シンジョウがモテるのはこういうところなんだろうな。なんだかんだ言っていつも、わたしがひとりでいるときにふらっとこうしてやってきてくれるのはハヅキとシンジョウだけだ。

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