溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「む、無理です!」
「だったら、辞めてもらうしかないな」
ここが銀座の高級フレンチレストランということも忘れて声を荒らげる私に、彼が容赦なく言い放つ。
「……精一杯、務めさせていただきます」
彼の言いなりになるしかない状況を悔しく思いつつ、仕方なく返事をした。
「あとは、俺と一緒に暮らすこと」
「はい……えっ?」
ほぼ条件反射のように返事をしてしまったけれど、これはさすがにあり得ないと気づいた。
「ど、どうして専務と一緒に暮らさなければならないのでしょうか?」
思わず声が裏返る。
「実は俺は家事が苦手なんだ。だから雨宮さんに同居してもらって家事全般を頼みたい」
動揺していることが明らかな私を見た彼が、クスリと笑った。
高校を卒業すると同時に上京してひとり暮らしをしている私は、おおよその家事はできる。けれど好きでもない相手と同居するのは、絶対に無理。
「専務と一緒に暮らすことはできません!」
「どうして?」
声高に反論しても、彼は常に冷静だ。
「だって知り合ったばかりの相手と同居するなんて、常識的に考えてもおかしいですよね?」
「そうか? 俺と一緒に暮らせば、今住んでいるマンションの家賃を払わなくて済むんだぞ?」
「……っ!」
彼が出した条件はとても魅力的だということに、ようやく気づく。