溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~

「引っ越し資金は俺が出すし、家事手当もきちんと払う。少しの間、我慢して俺と暮らすだけで金が貯まる。悪くない条件だと思うが、どうかな?」

彼の言う通り、たしかに条件は悪くなくて心がグラグラと揺れた。すると、今までスマホをいじっていた広海さんが声をあげる。

「はい。契約成立!」

「えっ? ちょっと!」

話を強引に進めようとする広海さんに反論したものの、私を無視したまま専務に話しかけた。

「あのさ。もう俺、帰りたいんだけど」

「あと少しだ。我慢してくれ」

「ちぇっ」

不満げに唇を尖らせる広海さんをなだめた専務が、事務的に話を続ける。

「引っ越しは三日後の日曜日。業者はこちらで手配するから雨宮さんはなにもしなくていい」

いつの間にか一緒に暮らすことが決まっていることに驚き、目をしばたたかせる。

「そんなに急に?」

「善は急げというだろ?」

恋愛感情のない相手とひとつ屋根の下で暮らすのは、やはり抵抗がある。けれどクビを回避できる方法がほかに思い浮かばない。

こうして私は専務と一緒に暮らすという条件を、泣く泣く受け入れた。

< 24 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop