溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
専務室に続くドアをノックした広海さんの後ろで深呼吸すると、ピンと背筋を伸ばした。
「失礼します」
広海さんに続き、専務室に入る。
「本日づけで経理部から異動になりました雨宮菜々子です。秘書の業務に携わるのは初めてなのでご迷惑をおかけすることもあると思いますが、よろしくお願いします」
彼とはホテルのスイートルームで一夜を過ごしたし、昨夜は銀座のレストランでワインを飲んだ。しかし専務と秘書という立場で会うのは今日が初めてのため、丁寧に挨拶すると頭を下げた。
「こちらこそ、よろしく頼むよ」
下げていた頭を上げると、眉目秀麗な彼の姿が私の目に映り込む。
南向きの大きな窓のすぐ近くには白い応接セットが、その奥にはブラウン色のデスクとレザー張りのチェアが設置された専務室は高級感にあふれている。けれど品格のある彼の前では、どんな豪華な調度品もかすんで見えた。
カリスマ性のある彼に、地味な自分は不つり合いだ……。
胸の中で不安が大きく膨らむ。しかし現状から逃げ出すわけにはいかない。
「一日も早く即戦力になれるように努力いたします」
自分を奮い立たせる意味合いも込めて、再び頭を下げた。