溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~

挨拶を済ませると、外出する専務を見送るために本社ビルの一階に向かった。

車寄せ専用エントランスから、社長と専務が黒塗りの社用車の後部座席に乗り込む。

「行ってらっしゃいませ」

広海さんを始め、社長専属秘書の人たちが一斉に頭を下げる様子を見た私は、慌ててそれにならった。

本来ならば専務の外出には専属秘書である広海さんが同行する。けれど専務は終日、社長と行動をともにするため、専務秘書の同行は不要だという説明を受けた。

「幹部やお客様へのお辞儀は三十度。会釈は十五度。それから謝罪や感謝を伝えるときは最敬礼の四十五度。女性の場合は左手の上に右手を重ねてお辞儀をすること。いい?」

「は、はい」

社長と専務を乗せた社用車の見送りを終えるとすぐに、お辞儀のマナーを教えてくれる広海さんにコクリとうなずく。

「後でマナー本渡すからボロッボロッになるまで読み込むこと」

「ボ、ボロッボロッですか?」

「そう。ボロッボロ」

冗談なのかそれとも本気なのかわからない指示に小さな声で「はい」と返事をすると、社内に戻る彼を追った。

エレベーターで十四階に向かい執務室に入る。

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