溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
手料理を完食してくれた彼と一緒に両手を合わせた。
冷蔵庫にあった食材をすべて使い切ることができてスッキリしていると、彼が瞳を細めた。
「おいしかった」
「ありがとうございます。コーヒーを入れますね」
気持ちがホッコリと和むなか、イスから立ち上がる私に続いて彼も腰を上げる。
「明日は午前九時に引っ越し業者が来るそうだ。それから……」
食後のコーヒーを入れようとする私の横で、彼が引っ越しの説明を始めた。
「なにかわからないことがあれば俺に遠慮なく聞いてくれ」
引っ越しの説明をひと通り終えた彼が微笑む様子を見て思う。自分は彼のことをあまりよく知らないと……。
「それじゃあ、早速聞いてもいいですか?」
「もちろん」
「専務はコーヒーにミルクとお砂糖は入れますか?」
引っ越しやこれからの生活とはまったく関係のないことを尋ねた私の前で、彼の二重の瞳が大きく見開かれた。
「いや、ブラックで」
「はい。承知しました」
驚きの表情を浮かべていた彼に笑顔が戻る。