溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
後片づけが終わり、家に帰る広海さんを玄関ホールで見送る。
「広海さん。今日はありがとうございました」
今日一日のお礼を言うと、彼がニヤついた笑みを浮かべた。
「アンタに忠告。兄貴って手が早いから、襲われないように気をつけたほうがいいぜ」
専務には専用の寝室があるし、私にはゲストルームが与えられている。ひとつ屋根の下で暮らすことになっても、きちんとプライバシーは守られているし、イケメンな彼が平凡な私を襲うわけがない。
「もう……」
突拍子もないことを言い出した広海さんにあきれていると、隣にいた専務が静かに声を発した。
「広海。雨宮さんの前で、そんなことを言うんじゃない」
低い声で広海さんを諭す彼は威圧感があり、怖いくらいだ。
「はい、はい。悪かったです。じゃあ、俺はこれで」
一方の広海さんは、専務の注意など気にも留めていないのだろう。ヒラヒラと手を振り、玄関から出て行ってしまった。
「雨宮さん。広海が変なことを言ってすまない」
ドアがパタンと閉まるとすぐに、専務が頭を下げる。
「い、いいえ。気にしないでください」
弟の言動を兄である専務が謝ったことに驚いたものの、実直な人柄な彼らしいと思った。