溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~

会食に向かう専務を見送り、一日の業務が無事に終わる。ホッとしながら帰り支度を整えていると広海さんが思いもよらないことを言い出した。

「今日はから揚げが食いたいんだけど」

「えっ? から揚げ?」

「そう。から揚げ」

会食には同行しない彼の口から突然出た、脈絡のない話に首をかしげる。

「あれ? ひょっとしたら、から揚げは作れないとか?」

「そんなことないけど……」

「じゃあ、行こう」

イスからすばやく立ち上がった彼の頭の中では、これからスーパーに行って買い物をして、から揚げの夕食を私と一緒に食べることがすでに決まっているようだ。

「広海さん、から揚げ好きなの?」

「ああ。好きだよ」

昨日はハンバーグで今日はから揚げ。子供みたいなメニューをリクエストする彼をかわいく思いながら、執務室から出た。



「うまいな。アンタって料理上手なんだな」

から揚げを口いっぱいに頬張った彼が、盛んにうなずく。

主がいないマンションのダイニングで広海さんとふたりで夕食を取るのは少し変な気分だけれど、褒められるのはうれしい。

「ありがとう」

頬を緩めてお礼を伝えると、彼が照れたように笑った。

昨日の日曜日は丸一日、そして今日は仕事が終わってからも、私たちはずっと一緒の時間を過ごしている。

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