溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~

「専務? コーヒーを入れましょうか?」

広海さんを見送った後、リビングのソファに座っている専務に声をかける。しかし返ってきたのは、私の質問に対する答えではなかった。

「……広海とはずいぶん仲がいいみたいだな」

彼が刺々しく言う。

「親切にしてもらって感謝しています。もちろん専務にも」

まだ苛立った態度を取る彼に対して自分の気持ちを素直に伝えた。すると、彼が大きなため息をつく。

「つまらないことを言ってすまない」

「いいえ」

私と広海さんの仲を変に勘ぐったことをすぐに謝ってくれた彼に対して、首を左右に振る。

些細なことが気になってしまうのは、きっと疲れているからだ。

「コーヒー入れますね」

今日も忙しかった専務を労うように微笑むと、コーヒーを入れるためにリビングを後にした。しかしソファから立ち上がった彼に手首を掴まれてしまう。

「明日は早く帰れると思う。だから……」

私の手首を掴んだ彼の声が、徐々に小さくなっていく。

「だから?」

彼が口ごもるのは珍しいと思いながら話の続きを促すと、意外な言葉が返ってきた。

「……俺はブリの照り焼きが食べたい」

私の手首を解放して、口元を隠すように手をあてた彼が視線を逸らす。

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