溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~

翌週の土曜日。東京駅で待ち合わせた広海さんから、一枚の乗車券を渡される。

「えっ? 今からここに行くの?」

何度聞いても教えてくれなかった行き先が軽井沢だったことに驚き、受け取った乗車券をまじまじと見つめた。

「そんなに驚くことか? 軽井沢なんて近いじゃん」

「近くないよ」

すぐさま反論してみたものの、彼は平然としたまま私の手を握る。

「発車時間迫ってるから急ぐぞ」

「あ、うん」

急に知らされた軽井沢行きに戸惑いながら、彼に手を引かれて新幹線乗り場へ向かった。



東京駅から新幹線に乗り込み、一時間ほどで軽井沢に到着する。

「軽井沢って近いんだね」

「だから近いって言ったろ?」

「そうだね」

思っていたよりも軽井沢が近かったことに驚きつつ、改札を通り抜ける。

梅雨の晴れ間となった今日の軽井沢は、日差しは強いものの湿度は低く空気がカラッとして過ごしやすい。

遠くに見える浅間山を眺めながら歩道橋を渡ると、目的地であるショッピングモールに到着した。

入口にあったパンプレットを手に取って広げる。

マップをひと目見ただけで、このショッピングモールがとてつもなく広いということがわかる。

「広海さんはどこのお店を見たいの?」

「全部」

「えっ? 全部は……あ、ちょっと待って」

一日で全部のショップを見て回るなんて絶対無理。そう言おうとした私を置き去りにしたままショップに入って行く彼のあとを急いで追った。

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