溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~

翌日の日曜日。ふらりとマンションに訪れた広海さんが、リビングのソファにドシンと腰を下ろす。

「兄貴と鎌倉に出かけたんだって?」

「あ……うん」

内緒で出かけたことが後ろめたくて、彼の前で正座をする。

「メッセージも無視されて、俺、けっこう傷ついてんだけど」

「ごめんなさい」

「あ~あ。俺もあじさい、見たかったな」

「……」

ネチネチと嫌味を言う広海さんに困惑していると、パソコンに向き合っていた専務が顔を上げた。

「広海。いい加減にしないか。雨宮さんを誘ったのは俺だし、スマホの電源を落としたのも俺だ。文句があるなら俺に言え」

「だったら言わせてもらうよ。兄貴、抜け駆けするんじゃねえよ」

諭すように言う専務に対して、広海さんが挑発的な態度を取る。

「ひ、広海さん! そんなにあじさいが見たかったのなら、来週一緒に鎌倉に行きましょう」

今にも一触即発しそうなふたりの間に慌てて入った。

昨日満開だったあじさいが、来週まで咲いているかはわからない。けれど鎌倉の見どころは明月院だけじゃない。

来週は鶴岡八幡宮や大仏を見て回るのも楽しそうだと考えていると、広海さんが首を左右に振った。

「嫌だね。別に俺、あじさいに興味ないし」

「……」

ついさっきはあじさいが見たかったと言っていたのに、今は興味がないと言う広海さんに、返す言葉が見つからない。

「来週は俺が行きたいところに、アンタを連れて行く。兄貴、いいよな?」

「……雨宮さんが嫌じゃなかったら別にかまわない」

ふたりの視線が私に注がれる。

自分から出かける提案をした手前、断ることなどできなくて「わかりました」と返事をした。

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