【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
いけない。しっかりしろ、蒼士。もっと彼女に気を配れ。
心の中で自分を叱咤する。
俺よりも綾香の方が精神的に辛いはずだ。
「大丈夫だよ」
優しく微笑んで彼女の手を掴む。
それで少し綾香がホッとしたように思えて安心する。
自分の体力も限界に近かったが、なんとか無事に家まで辿り着けば、一気に緊張が解けたのか、家に入るとすぐにリビングのソファに力なく腰を下ろした。
もう動く気力がない。このまま朝まで寝てしまいたいが、綾香にそんな弱々しい姿は見せたくない。
少し休んだら着替えよう。
ソファに身を預け目を閉じると、睡魔に襲われた。
必死に抗うが、意識が途切れ途切れになる。
だが、綾香の話し声が聞こえて来てパッと目が覚めた。
「……蒼士が風邪を引いたみたいで熱があるの。私のせいだわ。私を助けるために海に飛び込んだから彼は風邪を引いたのよ」
綾香は一体誰と話しているのか?
ソファから立ち上がり、その声がする方を振り向けば、彼女がキッチンにいてスマホで誰かと喋っている。
キッチンにいるということは、なにか料理を作ろうとしているのだろうか?
それはマズイ。
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