【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
「それは……大谷先輩のところです!」
何も考えずにそう言い返したら、彼は静かな目で私を見た。
「今、彼は婚約者とふたりで暮らしているんだよ。邪魔すべきではないと思うけどな」
氷堂の言うことは正しい。
私がいては美佳や大谷先輩は落ち着けないだろう。
だが、氷堂の家で暮らすなんて絶対に無理よ。
「それならホテルに泊まりますわ」
少し考えてそう答えたら、彼に突っ込まれた。
「お金はあるの? 火事で全部燃えてしまったし、ニュースとかで資産を差し押さえられたって聞いてるが」
悔しくてギュッと唇を噛む。
大谷先輩に借りたお金が少しあるけど、今までと同じ金銭感覚で使ってはすぐになくなってしまう。
ホテルに悠長に泊まる余裕なんて今の私にはない。
だとすると、世間でいうところの私はホームレス!?
ショックだった。
花山院家の社長令嬢がホームレスだなんて。
いえ、……私はもう社長令嬢なんかじゃなかったわ。
「綾香はここにいるしかないんだよ。君が路頭に迷っては、大谷さん達は結婚どころじゃなくなるんじゃないかな?」
大谷さん達を思いやるような口ぶりだが、これは彼がよく使う手。
私の退路を断つ気なのだ。
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