【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
「副社長秘書の鈴木と申します」
自己紹介してペコリと頭を下げると、恐る恐る顔を上げた。
緊張で少し声が震えてしまったけど、私が花山院綾香だと気づいた様子はない。
「……困ったな。スーツのボタンが取れてしまってね」
社長は困惑顔で"助けてくれ"と言わんばかりにチラチラ私を見る。
出来れば何かボロが出る前に自分のオフィスに戻りたい。
でも、困っている人を放ってはおけないわ。
ああ、もう……どうなってもいい。
氷堂との縁もいずれ切れるのだし。
半ば捨て鉢になりながら、ニコッと笑顔を作って申し出た。
「私がボタンをおつけしましょうか?赤石さんはいつ戻るかわかりませんし」
「そうか。では、お願いしようかな」
社長は私を見て相好を崩す。
笑ったお顔は氷堂と同じですのね。
「では、スーツとボタンを貸して頂けますか?」
手を差し出せば、社長はまず手に持っていたボタンを私に渡し、ジャケットを脱いだ。
ジャケットも受け取ると、側にある打合せスペースの椅子に腰掛け、スーツのポケットからソーイングセットを取り出す。
「ほお、いつも持ち歩いているのかね?」
社長がソーイングセットを見て感心したように言う。
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