【極上旦那様シリーズ】今すぐお前が欲しい~俺様御曹司と甘く危険な政略結婚~
「持っていると安心ですもの」
針に糸を通しながら答えれば、「老眼の私には糸を通すことさえ出来ないな」とハハッと笑った。
「私も会社の経営なんて怖くて出来ませんわ」
フフッと笑ってボタンをつける私を社長はジーッと見ている。
「うまいものだな」
料理は苦手だけど、昔から裁縫は得意。
「お役に立てて光栄ですわ。これで、大丈夫だと思います。また、ご用命お待ちしていますね」
ボタンをつけ終えたジャケットを社長に渡すと、茶目っ気たっぷりに微笑んだ。
「……ありがとう。君はいいお嫁さんになるだろうね」
思いもよらぬ社長の褒め言葉に自虐的に返した。
「残念ながら料理が全く出来ませんの」
「あれは料理が好きだから、なんの問題もないが」
社長がボソッとそんな発言をするが、意味がわからなかった。
「は?」
キョトンとする私を見てひとり納得顔の社長。
「……なるほどね。あれが欲しがる理由が少しわかった気がする。副社長のこと、よろしく頼むよ」
とびきりの笑顔を見せると、社長は自分の部屋に戻っていった。
「……なんだったのかしら?」
秘書室のドアを見て首を傾げていたら、赤石さんが書類を手に戻って来た。
< 95 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop