君へのLOVE&HATE
3月
満開の桜の花が満月に照らされて艶やかに光る夜
穂積は笑顔で
「またな」
と私の頭をなでてキスをしてくれた。

それがサインだったかのように穂積は私の前から桜の花びらが舞い散る中、消えた。

穂積が消えてからも
私のまわりは何一つ変わらなかった。

穂積がそこにいたことがまるで夢だったかのように
日常が過ぎていった。

誰一人として
香椎穂積という存在を口にすることはなく


誰一人として
香椎穂積という存在の記憶はなかった。


<記憶はなくなるよ>



穂積の言葉通りに穂積に関わる人たちは記憶を無くしていた。

-----------------ただ、私を除いて。


穂積とすごした一年は
私のなかにしっかりと記憶として
綴られていた。


穂積がいなくなって
私はあることを叶えるために
焦っていた。
時間がなかった。

穂積と再会する10年後。
私は必ず穂積を救うと決めた。

誰も救えないのなら私が救えばいい。

そう決めた。



そして、
10年が過ぎて
やっと、穂積と会えることができた。



桜祭の少し前に穂積の様子を見るために病院へ行った。
おそらくすでに入院はしていると思っていた。



病室に姿はなく

予想通り

桜の木の下で再会した。

10年後の穂積は
やっぱり変わっていなくて
少しだけ大人びた顔になっていたこと
少しだけ身長が大きくなっていたこと
それ以外は私の大好きなままだった。

再会してなんども口にしたくなった。
10年前に私たち会っているの・・と。

でもそれは言えなかった。



今日、穂積は、10年前から戻ってくる。
きっと、
あの桜の木の、下にいる。

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