君へのLOVE&HATE
「おはよう」

友達に
挨拶しながら自分の机に座る。

「おはよう、佐々木さん」
机にカバンを置くと、隣の席の、爽やかイケメンが声をかけてくる。

学年で、一番優秀、容姿端麗。
おまけに性格もよく、品行方正。

学生の模範のような彼が、いつもの作られた笑顔をむける。

表向きの、笑顔だ。

「おはよう、香椎くん」

それ以上
話をするわけでもなくわたしたちは、机に向かった。

必要以上にかかわらない、、。

暗黙の了解。


まもなく、担任が入ってきて
ホームルームが始まった。

学年合宿のことや、期末テストのこと、諸連絡など話をしてすぐに授業がはじまった。

ちょうど、1時間目は担任の科目だった。

苦手な数学。
新しい単元に公式・・たくさんの数字の羅列

ただ苦手なだけじゃなくて
数学は・・いろんなことを思い出させる。

<景都は、優秀だから数学も大丈夫だよ>

頭によぎるやさしい声。
胸をぎゅっとさせる切ない声。


担任が試験に出るところ、とか話をしているけれど、
私はあまり集中できなくて、窓の外をみる。

いつになったら・・あの人にとらわれなくなるのかな・・。
まだあの人にこころを奪われたままなのかな・・わたしは。

ふと、窓の外に目を向ける。

一番後ろ、窓際が私の座席。
この場所はお気に入り。
校舎三階から見える景色がとても好き。

学校は小高い場所にあるから
すこし遠くの街並みまで見渡せる。

家の近くの神社にある大きな桜の木も見える。

毎年、きれいな桜の花を咲かせるこの木がお気に入りだった。

奇跡が起こせるという伝説の桜の木・・。

三月にある神社のお祭りの時、この桜の木の下で強く強くねがったものだけに奇跡が起こせるという。

奇跡とか

伝説とか

そういう類のものは信じているわけじゃない。

・・・・・信じていないわけでもない。

だけど・・・


もし、本当ならいまのわたしが願うのは、、、。




がさっと音がして、机にノートの端キレが置かれる。

穂積は何事なかったようなポーカーフェイスで黒板を見ている。

静かに開くとそこには、いつもの内容があった。

<今日、放課後、いつものところで>

二人だけの、秘密の、約束。



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