パン屋の眼鏡さん
* * * * *



あれから何年経ったのだろうか。

思い出せないほど歳は食った気がする。



そして…



どうしてこうなった?



「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」



物凄くて、例えようのない叫び声がマンション一室から鳴り響く。


部屋はワンルーム。
(本人曰く)まだ片付いている方で、棚の上には美男子たちが並んでいる。


ほとんどが眼鏡をかけていて人間ではない。
2次元のキャラクター達だ。



そして叫び声の主は広げられている布団の上でパジャマでゴロゴロしながらスマホを片手に奇声と言わざるを得ない声を発していた。



「ついに来た…ついに…!!!!」



そのスマホの画面に映っていたのは漫画の表紙。


少女漫画の表紙とかならまだ許されていたと思う。


だが、その画面には男の子二人だけしか映っていない。



「この日をずっと待っててん…

上司にどんだけイライラしても、イジられても、嫌なことがあっても…
先生の作品を読むまでは死にきれんって…!

よく耐えた私!頑張ったぞ私!だから今日は心ゆくまま先生の御本を堪能するぞ!!」



そう、今彼女が手にしているのはBL漫画の電子版。


この日のために生きていたらしい。



そしてお気づきだろうか。



これが私だ。



そして私は腐女子だ。(正確には隠れ腐女子)



え?美少女を想像してたって?笑

誰が初めにそんなことを言った?笑



どちらかといえば、ぽっちゃり体型で可愛いとか言われたことのない人間だ。

あ、でも見知らぬおじいちゃんには言われた気がする。



休みの日はこうして部屋でゴロゴロしながら漫画を読むかゲームをして1日を過ごす。

我ながらに鼻で笑いたくなるほどの引きこもりだ。



そして何よりも眼鏡キャラが大好きな眼鏡フェチでいつか推しの眼鏡になることが夢らしい。(物理的に無理だが)



さっきまでのメルヘンチックな夢はどこへやらという程の歳の食い方をした私。

何をどうしたらこうなったのか…


< 2 / 8 >

この作品をシェア

pagetop