可愛い女性の作られ方
「……ちょっと。
理由はわからなくもないですが、あんまり引き摺るのはよくないですよ」

「そう、だな」
 
……ううっ、ごめん、美咲ちゃん。
変な気、使わせて。
でも原因はそっちじゃないんだ。

朝の準備をしつつ、なんとなくそわそわと加久田を待つ。
しかしなかなか奴は来ない。

「おはようございます」

「もう!
加久田、あと五分で遅刻だぞ!」

「別に遅刻してないからいいだろ」

美咲ちゃんに絡まれている加久田を見て、ほっと胸を撫で下ろす。
目が合うと、にこっと笑われた。


ひたすら一日、昨晩のことを考えないように仕事に打ち込んだ。

……それでも。

加久田と目が合ったり、手がふれたりするだけで、どきりとしてしまう。
なぜか疲れる一日を過ごし、退社時間まで一時間を切ったところで、外回りに出していた加久田からメッセージが届いた。

【あとで、先輩の家に直帰します】

「美咲ちゃん!
加久田、直帰になったから!」

「えー。
そうなんですか?
……っていうか、篠崎さん、顔、赤いですよ?
どうしたんですか?」

「えっ?
あっ、部屋の中、なんかちょっと暑くないか?」
 
わざとらしく、ファイルで扇いでみたりしたけど、美咲ちゃんは不審そうだ。

「そうですか?
あ、またいつかみたいに熱でてるんじゃないですか!?」

「そんなことないよ」

「……そうですね。
おでこ、熱くないし。
ならいいんですけど」

私のおでこから手をはずして、やっと美咲ちゃんが納得してくれた。
気付かれないように小さくため息。

……うちに直帰って、どういうことだよ?

なんかちょっとむかついて、返事は返さないでおいた。

帰りにスーパーに寄って帰る。
買い物して、家に帰って、部屋着に着替えかけて……それはどうかと思い、普段着に着替える。

冷蔵庫の中や、その辺りに残っている野菜を集めて、小さく刻んで野菜スープ。
サラダスパ用の麺が少し残っていたので、短く折って入れて、トマトも放り込んで、最後にチーズを振り込んで、ミネストローネ風。

茹でたキャベツをざく切りにして、荒く潰したゆで卵とマヨネーズで和える。
隠し味にマスタード。これで簡単サラダ。

多めの油に輪切りにしたじゃがいも入れて、揚げ焼きにしてフライドポテト風。

油を捨てて、南瓜にピーマン、人参なんかを焼いて軽く塩こしょう。
フライパンを拭いて、一口大に切った鶏ももを焼く。
火が通ったら、にんにく醤油ダレを入れて絡ませる。
じゃがいも・焼野菜をお皿に飾り、横に鶏肉をのせる。

スープをスープボールに入れて、ごはんはカフェオレボール風の食器についで、軽くパセリを振る。
これで、カフェ風チキンソテーセットの完成…………って!
一体なにやっているんだ!
私!
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