空に向かって


病院からの帰り道、ガンガン照りの太陽が真上に向いていて蒸し暑い道を一人で歩く。

中年の先生からはコケたりしたらいけないからタクシーで帰りなさいと言われた。

なんでもコケたり打ち付けたりすると何とかっていう細胞が増えて時には命に関わるんだとか。


「…あつ」


八月も終わりかけだと言うのに日中気温は35度を超える猛暑日。

そんな気温に耐えれるわけもなく、一人で帰り道に見つけた喫茶店に寄る。

カランと昔ながらの音を立ててドアを開ける。

ブワッと涼しい風が吹き抜け、一人なのに四人がけのボックス席に通された。


「…あの、私カウンターでもっ」

そう言いかけた時。

「お客様はお怪我なさっているので、ボックス席の方がお寛ぎになられやすいかと」

かなりのお年であろうおじいちゃん店員が気を使ってくれた。

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