キリンくんはヒーローじゃない
僕を見てほしい


林間学校を終えて、いつもの日常が戻ってきた。相変わらず、A組のみんなには無視をされているし、サジマには面倒ごとを押しつけられている。

それでも、変わったことがある。移動教室の時にD組の前を通りかかると、クラスのみんながわたしの名前を呼んでくれるようになった。その中でも金髪ギャル二人組は、わたしのことを気に入ってくれたみたいで、昼休みの時間に呼びだされてメイクをされたり、勉強を教えあったりと、友達ならではの遊びを楽しんでいる。

それ以外にも、ツキ先輩が学校内で話しかけてくれる機会も増えてきて、まさに順風満帆な毎日を送っている。


昼休み、サンドイッチ片手に、屋上へと続く非常階段に腰を落ち着ける。日常が変化しても、わたしのお気に入りの場所は変わらない。手提げ鞄から今日発売されたばかりの少女漫画を取りだし、読み耽る。


前回、主人公が自分の気持ちに気づいたところで終わってしまって、続刊が出るまで気になって夜も眠れなかったんだ。


「そうそう。日菜が颯太くんじゃなくて、槇くんのことが好きだって気づくんだよね」


学園の王子さまである、春川颯太くんのことを好きになって積極的にアピールするんだけど、幼馴染の妹尾槇くんに彼女ができてから、自分の気持ちに変化が訪れてモヤモヤしだすの。


「そして、そこから颯太くんのことは自分にとって憧れだっただけで、本当に好きなのは槇くんだったって、離れてみてわかるんだよね」


槇くんも槇くんで、主人公のことをずっと好きだったけど、颯太くんには敵わないからって諦めようとして違う女の子と付き合い始めるの。お互いが想いあってるのにくっつかない、このもどかしい感じがたまらない。

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