この空の下
「就活も大変だって聞いたよ?」

「うん」

吉川さんが話したのね。



「戻ってこないか?」

「えっ」

「診療所の経営もギリギリってところなんだ。戻ってきてくれないか?」

そんなこと・・・

できることなら、私も・・・



「頼むよ」

消えてしまいそうな声。



でも、

彩葉さんのことを考えると、やはりできない。



「ごめん」

「どうしてもか?」

「うん」


「分かった。無理を言って悪かったな」



私は再びドアを開けようとして、

やはり、隆哉さんに止められた。



「隆哉さん?」


「ごめん。謝りたかっただけだから。これ以上羽蘭を困らせるつもりはない。突然来て悪かったな」

そう言って帰っていった。



私は後を追おうとしてできなかった。

会ってしまえば気持ちが止められなくなるのが分かっていて、必死に自分を止めた。
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