この空の下
「あら、羽蘭ちゃん?」

現れた看護師は、昔から私をよく知っている人だった。


「お久しぶりです」

「本当ね。お医者さんになったんですってね」

「ええ」

「おじいさまが来るたびにうれしそうに話してらしたわ」

「そうですか」


おじいさんもおばあさんも、私が医者になるのを喜んでくれた。

さすがに経済的な援助は難しかったけれど・・・


「母の様子は変わりませんか?」

「うん、多少退行した印象はあるわね」

「そうですか」


無機質で冷たい廊下を通りながら、私の気持ちもだんだん重くなる。
< 343 / 405 >

この作品をシェア

pagetop