【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 日本へ帰るのが嫌なのではない。柊吾さんのそばにいたい気持ちはなによりも勝る。

 それでも別れはいつだって悲しい。

 私は泣かないと決めた。私が涙を流せば、柊吾さんに気を使わせてしまうから。

 帰国の前日、私と柊吾さんはオーリィ家へ挨拶に行った。

 梨沙が焼いてくれたガトーショコラとアールグレイティーで午後のお茶の時間を楽しみながらのお別れだった。

 楽しい時間は瞬く間に過ぎて、オーリィ一家はアパルトマンの下で見送ってくれる。

「ハル、日本へ行ってもちゃんとフランス語の勉強は続けてね」

 梨沙が瞳を潤ませながら言葉にする。

「はい。必ず」

 私は梨沙に抱きついて力強く約束した。

「ハル。私のお姉ちゃん。寂しいわ」

 ポーリンが私の手を取る。彼女は別れを惜しんで泣いている。ジュリアンもポーリンの横に立って瞳を曇らせていた。

「私も。今度は東京で会いましょう。クリスマス休暇に。一緒に原(はら)宿(じゅく)に行こうね」

 ポーリンが原宿に行きたがっているのを知っていたからそのことを口にすると、彼女は泣きながら笑顔になる。

「うん。絶対ね」

 ポーリンと私はいつも以上に長くハグをした。そして私は隣のジュリアンに笑顔を向ける。

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