【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「お父さまがお待ちですよ」

 右手のステンドグラスが埋め込まれたドアの向こうがリビングで、そこに車イスに座ったお義父さまがいた。後ろに理学療法士のようなすらっとした男性と、看護師らしき年配の女性が立っている。

「父さん、退院おめでとう。焦らずに回復に努めて」

 絞り出すような声でお義父さまは返事をして小さく頷く。

「お義父さま、退院おめでとうございます」

 心を込めて口にすると、お義父さまは動くほうの手で手招きをした。一歩近づいた私の手を握る。

「しゅう、ごは、しあ……わせ、そうだ。ありが……とう」

 一生懸命言葉にしようとするお義父さまに涙が出そうだった。

「私も柊吾さんと結婚できて幸せです」

 お義父さまは嬉しそうに片方の口角を上げて頷いた。

 昼食は、八神家の専属シェフが腕によりをかけて作ったローストビーフなど、美味しいごちそうをいただいた。

 お義父さまは流動食を一緒に。

 食事が終わると、柊吾さんはお義父さまと書斎へ向かい、お義母さまも席を外した。リビングには私と正巳さんだけ。

  正巳さんは初対面から感じがよかったので、ふたりきりでも戸惑うことなく会話ができる。

「紅茶を入れよう」

 私のカップが残り少なくなっているのを見て、正巳さんは保温されているガラスのポットから注いでくれる。


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