【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~





「心春! 心春!」

 柊吾さん……。

 瞼が重くて開かない。手が大きな手に包み込まれている感覚はわかる。

 私……どうしちゃったんだろう……。

 そのとき、女性とぶつかって飛ばされたことを思い出した。

 その恐怖がよみがえり、誰かの手をギュッと握ってハッと目を開けた。

 無機質な白い天井が目に入り、薬品のにおいがした。

「心春! よかった……」

 柊吾さんだった。

「どうして……病院……?」

 喉が渇いてしゃがれた声だった。

「暴動の現場に居合わせてしまったんだ。十五時間以上眠っていた。よかった……」

 柊吾さんは瞳に安堵の色を浮かべたけど、表情がこわばっていた。

 柊吾さんは東京からパリへ瞬間移動してきたのかと思うほどに、私の時間の感覚がない。

 柊吾さんはいつも仕事へ行くときみたいにフルオーダーのスーツを着ている。

 そこへフランス人の男性医師と女性看護師が姿を見せる。

「気がつきましたね」

 男性医師は私の目にライトを当てて、瞳の動きを確認する。

「まだぶつけた側頭部は痛むでしょうが、MRIもレントゲンも問題ありませんでした。午後に退院を許可します」
「ありがとうございます」

 柊吾さんは胸を撫で下ろしたような表情になって、男性医師にお礼を言う。

< 239 / 250 >

この作品をシェア

pagetop