【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 ジュリアンが一歩踏み出し、部屋の中へ入るのを見て、私はイスに座ったまま首を大きく左右に振る。

「止まって! 入ったらいけない約束でしょ」

 異性の彼は、私の部屋に入らないというのがオーリィ家の規則になっていた。

 ジュリアンと家で話すときは、リビングでと決められている。

 私はそのルールに満足していたけど、ジュリアンは納得できないようで、今のように入りかけるときがある。

「ハルは固いな。もっと柔軟に考えようよ」

 すぐに立ち止まったジュリアンは大袈裟にため息を漏らし、入口に引き返す。

 彼らの私の呼び方は『ハル』。『コハル』では呼びづらいらしい。

「もうリセ(高校)へ行く時間じゃないの?」

 今日は日曜日だけど、ジュリアンとポーリンは特別課外授業がある。

「行きたくないな。ハルと一緒に美術館へ行きたいよ。ハルはかわいいから心配なんだ」

 朝食の席でもジュリアンはそのことをずっと言っていた。

「美術館好きじゃないくせに。遅刻しちゃうよ? 行ってらっしゃい」

 ジュリアンは口元をへの字にして肩をすくめる。

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