【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
「ジュリアンの言う通り、声をかけられても無視しなさいね。どうしようもなかったら近くのお店に入って助けを求めなさい」
「梨沙、もう五カ月も同じことを言ってるわ」
「毎日言っても言い足りないくらいよ。あなたはまだ十八歳よ。ハルのご両親にくれぐれもと頼まれているんだから」

 梨沙は私の帽子の傾きを少し動かす。

「はい。気を付けて行ってきます!」

 私は真っ赤なエプロンをつけたスタイルのいい梨沙に抱きつき、アパルトマンを出た。

 九月になったパリは秋に入り、朝晩はジャケットなどの上着が必要なくらい涼しい。

 今日は快晴だけど少し肌寒くて、ジャケット着てきたのは正解。

 私は徒歩十分ほどのところにあるメトロに向かう。目指すはオルセー美術館の最寄りのミュゼドルセー駅だ。

 到着するまで、電車内では家族連れの近くに立つ。

 これは私が身につけた防犯とナンパ対策。

 日曜のおかげで小さな子供を連れた家族連れが多いのが嬉しい。

 ミュゼドルセー駅を出たところで、ふたりの若いフランス人の男が近づいてくるのがわかった。

 目と目が合ってしまったが、とっさに逸らし、ふたりを避けるように歩く足を速める。
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