【極上旦那様シリーズ】俺のそばにいろよ~御曹司と溺甘な政略結婚~
 オルセー美術館はすぐそこだった。

「ねえ、日本人?」
「綺麗な髪だね」

 背後から声が聞こえるけど立ち止まらない。

「無視しても俺たちはめげないよー」

 しつこいなと思いながら、なおも無視してオルセー美術館に歩を進める。

「待てよ!」

 男の手で肩を掴まれ、私はビクッと身体を跳ねさせ足を止めてしまった。

 フランス語がわからないことにしよう。

「触らないで!」

 日本語で強く言って、身体を動かし男の手から逃れる。若い男ふたりと対峙する形になる。

「フランス語がわからないのか。かわいいし飲みに誘って部屋に連れていこうぜ」

 私はギョッとなったが、表情に出さないように憮(ぶ)然(ぜん)と睨みつける。

「クソ男! あんたと一緒に行くわけないでしょ! ばっかじゃないっ!」

 思いっきり日本語で叫ぶと、男たちは一瞬ひるんだ顔になった。

 しかし、男は私の腕を鷲掴みするように強く掴む。

「触らないでよ! 頭おかしいの!? 気持ち悪い! 放してよ!」

 強引な男たちに腹が立って掴まれている手を叩く。

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