対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
それからはお互いの好きな話題で盛り上がり、1時間なんて時間がはあっという間に過ぎていった。最初に漂っていた緊張感はすっかりなくなっていた。それどころか、拡樹に親しみやすさすら感じていた。
そこで、拡樹から1つ提案がなされた。
「うちの父も宮園で、僕も宮園です。ややこしいので、呼び方を変えませんか?僕のことは、下の名前で呼んでください」
「下の名前で、ですか?」
当惑した表情で若干の抵抗を見せる恵巳。だが拡樹はキラキラした目で見つめている。これは、待っている目だ。
「え、今、呼ぶんですか?」
「はい!」
せめて後日にしてくれ、と声には出さずにつぶやく恵巳。ただでさえ下の名前を呼ぶのに照れがあるというのに、用もないのに名前だけ呼ぶというシチュエーションがさらに恥ずかしさを強くさせていた。
「…ひ、ろ…、き、さん」
一文字ずつぽつぽつと言った単語は、名前というかただの文字。
「なんだか、呼ばれた気がしませんね」
精一杯の勇気を辛辣な言葉と笑顔で一蹴される。このままでは悔しくなった恵巳は、ぐっと拳を握り、気合を入れて口を開いた。
そこで、拡樹から1つ提案がなされた。
「うちの父も宮園で、僕も宮園です。ややこしいので、呼び方を変えませんか?僕のことは、下の名前で呼んでください」
「下の名前で、ですか?」
当惑した表情で若干の抵抗を見せる恵巳。だが拡樹はキラキラした目で見つめている。これは、待っている目だ。
「え、今、呼ぶんですか?」
「はい!」
せめて後日にしてくれ、と声には出さずにつぶやく恵巳。ただでさえ下の名前を呼ぶのに照れがあるというのに、用もないのに名前だけ呼ぶというシチュエーションがさらに恥ずかしさを強くさせていた。
「…ひ、ろ…、き、さん」
一文字ずつぽつぽつと言った単語は、名前というかただの文字。
「なんだか、呼ばれた気がしませんね」
精一杯の勇気を辛辣な言葉と笑顔で一蹴される。このままでは悔しくなった恵巳は、ぐっと拳を握り、気合を入れて口を開いた。