拾ったワンコが王子を連れて来た
「あれ、気づかなかった?
何度も着けては遣って、着けては遣ってたのに?」
「え? そうなの?
でも、コンドームなんて、この部屋に置いてないよね?」
ラブホテルなどと違って、うちの様なシティーホテルには、避妊具の様な物は部屋に常備されてない。
今回、私達が泊まったのは、私が酔い潰れた突発的な事で、稀一郎さんも泊まるなんて予定して無かった筈。
と、言うことは…
稀一郎さんは、常にコンドームを持ち歩いてるって事…?
それも1つだけじゃなく、いくつも…
何の為に?
誰の為に?
「真美?
また、余計な事考えてるだろ?」
「え?」
「今、考えてる事言ってみな?
なんでも話し合って行こうって言ったばかりだろ?」
「…えーと…」
「ん?」
「こんなに沢山のコンドームって…どうしたの…?」
私の心配を他所に彼はほくそ笑い、彼は、私の為に差し入れがあったと言った。
「差し入れ?」
「柊真からね!」
「桜花崎さんから、私に? コンドームを??」
「真美に!って言うか、やっぱり俺にかな?」
私達が体を重ねる事は久々な事で、1つでは絶対に足りたいだろうからと、桜花崎さんから1箱頂いたと教えられた。
1箱も…
「昨夜、恭子さんからバトラーの話は聞いた。
きっと、真美は受けたいだろと思ったし、俺も受けさせてやりたいと思った。
真美には、うってつけの仕事だからね?
その為には、今はマズイだろ、子作り?」
「稀一郎さん…」
あなたはいつも私の為を考えてくれてる。
なんで…
私は、こんなに私を愛してくれてるあなたを、疑ったんだろう…
彼の気持ちが嬉しくて嬉しくて、あまりの嬉しさで再び涙が溢れて来た。
「あれ? 今度はどんの涙?」と言って、稀一郎さんは微笑む。
「もう! 稀一郎さん大好き!」と言って私も微笑むと、今度は私が彼に覆い被さり、彼の身体中に私のモノだと印を付けた。
「もしかして、俺、いま襲われてる?」
「そう! 今あなたは私に襲われてる!」
「なんならゴムまだ残ってるけど?
今度は真美が着けてくれる?」
「ごめん、それは無理!
明日からきっと忙しくなるし、きっと恭子さん鬼教官だと思うから?
体力温存しておかなきゃ?」
恭子さんの “ 私を信じてる ” と言ってくれた、彼女の気持ちに応えたい。
「確かに、彼女、鬼教官だろな?
小野チーフや柊真に鍛えられたんだから?
やれやれ…
今度は、俺が欲求不満になりそう…」と残念そうに言いながらも “ 頑張れ ” と言って、彼はチュッと優しいキスをしてくれた。