拾ったワンコが王子を連れて来た
彼女が帰って、当事者の私より哀しそうな顔をしてる生田さんに、私は敢えて笑顔を見せる。
「恥ずかしいとこ見せちゃって…
笑っちゃいますよね?
もう何年も父とは会ってないんですよ?
それなのに…再婚相手が、今頃になってこの家に乗り込んでくるなんて…」
「大丈夫か…?」
「笑いたけりゃ笑って良いですよ?
私の父、昔から女癖悪くて…
一緒に暮らしていた頃も、何度かこんな事があったみたいです。
そのうち何処かの女に刺されて死ぬんですよね?きっと…
馬鹿な男…」
「自分の父親を
そんな言い方するのはやめろ」
「私…父に裏切られてから、男の人を信じられなくなって…
母にも小さい頃から…
“ 貴女は男なんて信じちゃダメ!て…
女が男に頼って生きる時代は終わったのよって…
結婚なんてただの契約、些細な事で契約は無かった事にされるって…
そんな信用ならない契約なんて、するだけ無駄。
一人で生きていく術を身に付けなさい!” って言われて育って…」
この言葉が呪縛となっていた。
初めて他人(ひと)に話した事で、堰を切った様に溢れる涙。
「だから…ずっと恋というモノを避けて来た。
これからも、ずっと恋するつもりないです…
申し訳ありませんけど、やっぱりここ出て行って貰えませんか?」
「顔を上げて俺を見ろ?」
私は首を振り拒否をする。
しかし、生田さんは私の顔を、無理にあげるとこう言った。
「俺は、君を裏切らない。
一生君を愛し続けるって誓える。
だから、俺を信じろ!
一度だけで良い。この俺を信じろ!」
私が微笑んで有難うと言うと、生田さんはホッとした顔を見せた。
「でも、ごめんなさい…」
私の気持ちが変わらないと判ったのか、生田さんは仕事へと戻って言った。
多分このまま、彼はここへは帰ってこないだろう…
それで良い。
今までと同じ生活に戻るだけだ。
「あ、君(犬)が居たね? 君はずっと居ても良いよ? ここが嫌じゃなければ…」
私は彼(犬)に抱きつき、ずっと一緒にいてと、泣いて言った。
その夜、彼(犬)は私のベットに入って来た。
まるで私を心配して、慰めて居るかの様だった。