拾ったワンコが王子を連れて来た

「どう?」

「…美味しいです…」

「料理人として、一生側に置くのも良い考えだと思わない?」と言う生田さんに、私は呆れてしまう。

「あなた、馬鹿なんですか?」

皆んなに一目置かれてる人なのに…
私の知ってる彼は、馬鹿としか言いようがない人だ。

「僕の一目惚れないだ…」

また、僕って言った。

「また、深田恭子さんの事ですか?」

「彼女じゃなくて、君の事」

わたし…?
私に一目惚れ…生田さんが…?

「君が本社へ面接に来た時、僕達は会ってるんだよ?」

え?
面接の場に居たって事?

「君は覚えて無いだろうけど、本社近くの公園で、小さな男の子が自販機の前の側溝に100円玉を落としたと泣いていてね?

僕は自分の財布から100円出して、彼にあげようとしたら、君は急に側溝の蓋を持ち上げて、その100円玉を探し始めたんだ。汚れる事も気にしないで」

あっあの時…

「君は、見事泥だらけの中から100円玉を見つけると、そのまま彼に返すんじゃなくて、自分の財布の中の100円で自販機の水を買って、探し出した100円玉を綺麗に洗い流して、彼に渡したんだ。
彼はとても喜んで、その100円玉でお茶を買って、少し離れたベンチに座っていたおじいさんに、自慢げに渡してた」

あの時に居た人が…

「あの時、僕は凄くショックだった…
ホテルマンでありながら、彼の気持ちをくめなかった。お金はどれも同じだと思っていた、僕の浅はかな気持ち。
ホテルマンは、お客様すら気付いていない本当のリクエストに気付く事が出来て、一人前だと僕は思う。
それが君には、生まれながら備わっている」

そんな…

「昨夜の彼女にも、離れて行った男にいつまでも固執せず、子供と幸せになれって、言葉の端々から伝わった。
きっと、彼女は誰かに背中を押して欲しかったんだと思う」

なんで…なんでこの人は…
私の欲しい言葉を…




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