拾ったワンコが王子を連れて来た

食事を済ませると、私の側で待っていたワンちゃんの散歩へ行こうとすると、生田さんは、散歩も食事も、もう済ませてあると言う。

なら、仕事へ行く準備をと化粧を済ませると、一緒に行って欲しい所があると生田さんは言う。

「私、今から仕事なんですけど?」

「分かってる。そんなに時間は取らせない」

時間取らせないって…
どこに行くのよ?

いつから駐めてあったのか、玄関横のカーポートに駐められていた、生田さんの車に乗り、私達は出掛ける事になった。

「勤務時間までには、間に合うんでしょうね?」

「さぁ?」

さぁ?…って…
SAKURAホテルに入社(はいって)以来、私、無遅刻無欠席なんだから、間に合ってもらわないと困る。

私の心配をよそに、連れて来られた所は、
SAKURAグループの本社社屋だった。

ちょ、ちょっとなぜ本社なの?

車は社屋の地下駐車場へと入り、生田さんは車を駐めた。

「どう言う事ですか?」

「まぁ急がば回れってとこかな?」

急がば回れ…?
何言ってるの…意味が解らない。

私達ホテルマンが、普段来る事のない本社社屋。
況してや、地下駐車場など入る事はなくて、高級車の証であるエンブレムの付いた車が何台も駐まっていて、少し緊張する。
中には黒塗りの高級車もあり、運転手までも常駐している。
流石、SAKURAグループの社屋だ。

えっ! 嘘っ…

それらの高級車の中に、見覚えのある赤い車が有った。
それは、以前仕事帰りの私につきまとう様な、異常な行動をした車だ。
少しの間だったとはいえ、一瞬見たナンバープレートの番号が、私の誕生日と同じだった為、覚えて居た。

って事は…
えっ!?
私につきまとおうとした人は、本社の人間って事…
そしてその人は、今、このビルの中に居る。
やだ…怖い。

知ってしまった真実に、私の身体は震え足は動かなくなってしまった。




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