限りある命と限りのない願い。
 母親に見送られて電車に乗る。

 向かうは昔住んでた場所。

 駅とかは流石に忘れてたから調べた。

 たとえ、彼らが僕の事を忘れていたとしても、思い出の地をまわることができればそれでもいいと思ってる。

 途中で乗り換えもあって迷いそうになったが何とか辿り着く。

 色々変わってて迷いそうで不安になる。

 一緒に通ってた保育園に、小学校。

 途中でやめたけど中学校もそんなに変ってはいない。

 「この辺は見たことあるな」

 マンションから少し離れたところにある大きな公園は今でもまだ残っていた。

 遊具は少なくなっていたけれど。

 休憩がてら公園のベンチに座る。

 「来れて良かった…」

 これが最期だと思うと切なくなってくる。

 ベンチの近くに落ちていた細い枝を一つ拾って地面に絵を描く。

 昔よくやった絵描き歌。

 どちらが上手に描けるか勝負したことはいい思い出だ。
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