限りある命と限りのない願い。
 「楓奏?」

 名前を呼ばれて振り返る。

 「…陽多?」

 驚きの再会だった。

 彼は学校帰りなのか、高校の制服を着ていた。

 「戻ってきてたのか?」

 「ううん、ちょっと旅行気分?」

 「ふはっ、何だよそれ」

 彼は昔のように笑う。

 笑った表情は昔と変わっていなかった。

 陽多は僕の隣りに腰を下ろす。

 「何でこっちに?」

 「お母さんがアルバム探してくれてさ、それ見たら来たくなっちゃって」

 「ふーん」

 嘘は言ってない。

 だけど、病気や余命の事は言いたくなかった。

 「元気にやってたか?てか、今日平日じゃね?学校は?」

 「元気っちゃー元気。学校はサボった!!」

 本当はやめたけれど、どうしても本当のことは隠しておきたかったんだ。
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