私を繋ぐ優しい手錠
あの日、神代くんは私に提案した。
「あぁ、あれね。俺が来栖さんのこと好きだからって言ったらこのまま言及しない?」
「……ちゃんと答えて」
あの日。私は増水した川へと身を投げた。全てが嫌になった、なんて単純な理由じゃないけど。
それを見ていた神代くんは危険を顧みず私を助けた。1度も会話したことの無い、いや、1度だけある。その、たった一度だけで。赤の他人を助けようと思うのか。
「俺とそっくりなんだよね、来栖さんって。そのまま破滅に向かっちゃいそうで」
って、実際自殺未遂だったか、と笑った。
「…私と神代くんは全然違う。神代くんには友人もいて楽しそうじゃない」
「友達なんていないよ、俺が本音を言ったらみんな離れてく。そういうもんだから」
そういった彼の表情はどこか遠い、過去を覗くような、過去を見つめ返すような懐かしむような、それでいてどこか後悔が残るような、悲しげな目をしていた。
鳥が桜の枝に止まり、葉がひらりと落ちた。