一筆恋々

【一月十七日 手鞠より淡雪への手紙】


拝復
身勝手は重々承知しておりますが、他にあてもなく、すがるような思いで淡雪さんにお願いいたしました。
それを「益がない」とはあんまりではありませんか?
淡雪さんの言うことをなんでもひとつ聞く、という交換条件も、承服いたしかねます。

もしかして、淡雪さんはわたしと静寂さんのことを何かお疑いなのでしょうか?

静寂さんとのことは過去にございますので、どうかお気になさいませぬよう。
拝答


大正十年一月十七日
春日井 手鞠
久里原 淡雪様


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