エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない


本店営業部と支店は、仕事内容自体は同じだけど、異なる点もいくつかある。

そのうちのひとつが営業時間だ。
支店が十時から二十時まで営業しているのに対し、本店営業部は十時から十七時で、三時間短い。
それは、本社の定時が十七時だからそこに合わせてのことらしい。

本社に合わせて……ということで言えばもうひとつ、営業カレンダーも違ってくる。
支店が水曜休みに対して、本店営業部は土日休みだ。
休日数が違うけれど、それはそもそもの雇用条件が違うというからくりがあるらしい。

入社するまでそういった形態のことは知らなかったので、それを知ったときには、驚きながらも胸をなでおろした。
早番遅番があるよりも、毎日同じ勤務時間のほうが私的には生活しやすい。

そんな風に、本店営業部はあくまでも本社に合わせた形態なことも、一部社員に見下される要因のひとつなのかもしれない。

「先輩は、なんでも引き受けすぎなんですよ。白坂くん関連の質問なんか適当に流せばいいのに」

本社二階にある給湯室に向かいながら沼田さんがそんなことを言うから、苦笑いを浮かべた。

「それ、沼田さんが言う? 面倒だからって全部私に振ってるくせに」
「そういう断り方してるときもあるって話なだけで、普通に断ったりもしてますよ。〝仕事とは関係ないくだらない質問はやめて〟って。先輩もそうハッキリ言ったほうがいいですよ」

「今後のことを考えるとなかなかそうハッキリとは……。まぁ、あと何か月か経てばこんな状態もおさまるかもしれないし」
「先輩、仕事はできるのになんでそういうところ甘んですかね。人がいいっていうか」

給湯室につくと、沼田さんは持っていたトレイを作業台の上に置く。振動で、重ねたカップがカチャッとわずかな音を立てた。

「でも白坂くんが洗い忘れるなんて珍しいですね。彼、仕事はしっかりしてるのに。手伝いますよ」

ブラウスの袖のボタンを外そうとする沼田さんを「大丈夫」と止める。

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