エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない

「今日、陶芸教室の日でしょ。私もこれが終わったら帰れるし、もう上がっていいよ」
「そうですか? 実は今日、焼きあがってる予定なので早く見たくてウキウキしてたんです。じゃあ、お先に失礼します」
「そっか。それは楽しみだね。お疲れ様」

カップをシンクに移し、水を出しながら言うと、沼田さんが給湯室から出ていく。

その様子を何気なく見ていて……沼田さんと入れ違いに入ってきた人物に思い切り顔を歪めそうになった。
声にならない声で沼田さんを呼んだけれど、スキップでもしだしそうな背中には届かない。

「あ、桜井さん! こないだの、聞いてくれました?」

甲高い声で話しかけてきたのは庶務課の横沢さんだった。

時間は十八時。定時の十七時近辺だと、給湯室は誰かしら女性社員がいて雑談していることが多い。そして顔を合わせたら最後、しつこく白坂くんのことを聞かれてしまう。

だから、一緒にならないようにとこの時間を選んできたのに……運が悪かった。

横沢さんは、茶色く染めた髪を常に指先でいじっているような女性社員だ。パーマのかかった長い髪をいじる指先には、今日はオレンジ色のネイルが施されている。
規定違反だ。

ちなみに、横沢さん以外にも渡辺さんという女性社員もよく給湯室に入り浸っていて、ふたりの髪型や背格好、ネイルの趣味が似ていることから、沼田さんが〝給湯室シスターズ〟なんて揶揄していた。

「こないだの……なんでしたっけ?」
「白坂さん、どんなタイプの女性が好きなのかって」
「あー……そうでしたっけ。すみません。仕事中は私語は交わさないので、タイミングがなくて」

ちなみに、横沢さんと私は仲がいいわけではない。
白坂くんが入社する前は、すれ違って私が挨拶しても無視されていた。特別私が嫌われているわけではなく、いわゆる、男性と女性の前では態度が変わる系女子だ。

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