エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない

富所様の希望家賃と希望駅歩を考えると、ここはそこまで悪い条件ではない。まだ新しいし、ベランダが南向きについているから日当たりだっていい。

「そうですね……富所様の予算や条件を考えると、これ以上はなかなか難しいかと。例えば、少し古い物件でもいいのでしたらもう少し広いお部屋も紹介できますよ。もしくは駅までの距離を……」
「えー、新しくなくちゃ嫌に決まってるじゃん。新しくて広い部屋がいいって言ってんの。それに、駅までだって近くなくちゃ不便だし」

富所様が茶色い髪をがしがしとかく。
イライラしているのが目に見えてわかるけれど〝条件は譲れない、でももっとレベルを上げて欲しい〟と言われてもどうにもできない。

それでも、他の部屋に案内してみたら富所様の気も変わるかもしれない……と、手元の資料を確認していると、大きなため息が聞こえた。

「っていうかさー、大手だからと思ってお願いしたけど、全然大した物件ないじゃん」
「……ご希望に沿えず申し訳ございません」

「私、思うんだけど、あんたみたいな若い女はいい部屋案内できる権限がないだけじゃなくて?」
「いえ。決してそんなことは……」
「もっと立場の高いひとにお願いできないの? ハズレくじじゃん。時間の無駄だったし。最悪」
「……申し訳ございません」

言いたい放題言った富所様は「もういい」とさっさと部屋から出ていく。
けれど、最後にこちらを振り返り「一応、ここキープしといて」とふてぶてしく告げる態度に、笑顔を浮かべるのがやっとだった。

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