独占溺愛~クールな社長に求愛されています~
 商品の画像を見ているうちに、羊毛フェルトで作ったミニポーチを見つけた。スマホが入るくらいの大きさで、バッグの持ち手に引っかけて使うタイプのものだ。ベージュからダークブラウンへとグラデーションしているデザインもかわいいし、ふた代わりのベルトもおしゃれだ。

(これをあのふわふわの羊毛フェルトから作っちゃうなんて、すごい)

 詩穂は感心しながら、買おうかどうか悩んでいると、キッチンの方でガシャンと大きな音がした。

「どうしたの、大丈夫?」

 詩穂は部屋のドアを開けて、キッチンの方に声をかけた。

「……悪い。ボウルを落としたんだ。ちょっと床が悲惨なことになったけど……どうにかする」
「手伝おうか?」
「いや、いい」
「わかった。でも、手伝いが必要になったらいつでも言ってね」
「絶対に言わない」

 詩穂は思わず噴き出した。

 こんなアプリを難なく作ってしまうのに、料理に関しては要領が悪いようだ。それなのに、詩穂のために一生懸命作ってくれている。それを思うと、嬉しくてこそばゆいような気持ちになる。
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