私が恋を知る頃に
わかんない

言ってることがわからなかった

だって、ずっと私が悪い子だから暴力を振るわれるんだって何度も何度も教えられたから。

言うことを聞かないから、言う通りにできないから痛いことをされる。

私が産まれてきたから、お母さんは苦しくなって、だから私のせいだからって

ずっとずっとずっとずっとずっとずっと






私が悪くなきゃ、あまりにも理不尽で気が狂いそうだった。

だから、ずっと私のせいにしてきたのに。

苦しいのも辛いのも自分のせいにしたら、自分が悪いからって理由が出来て納得出来た。

なのに……

「穂海ちゃん、穂海ちゃんはなにも悪くないんだよ。痛い思いしてきたのも、怖い夢みるのも、悩んで苦しいのも全部穂海ちゃんに暴力を振るってきた人たちが悪いんだ。その人たちには、ちゃんと警察から制裁が与えられる。だから、もう自分を責めなくていいんだよ。」

心のどこかで気付いていたんだ。

自分が理不尽な理由で暴力を受けていたことも、ずっとずっと理不尽に我慢してきたことも。

でも、誰も救ってくれなかった

そんな状況だと分かっていながら、誰も手を差し伸べてくれなかった。

だから、自分のせいにして心の隙間を埋めるしか無かった。

「大丈夫。穂海ちゃんは悪くない。大丈夫。大丈夫。」

なんだか少し心に絡まりついていた蔦が解けた気がした。
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